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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)4228号 判決 1980年2月18日

原告 伊波善春 外一八名

被告 ノース・ウエスト・エアラインズ・インコーポレイテッド

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  (主位的請求)

被告は、原告らに対し、それぞれ別紙債権目録請求債権(一)欄記載の各金員と、これらに対する昭和五〇年一月二六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  (予備的請求)

被告は、原告らに対し、それぞれ別紙債権目録記載請求債権(二)欄記載の各金員と、これらに対する昭和五〇年一月二六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は、被告の負担とする。

3  仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告は、民間定期航空運輸事業等を営むアメリカ法人であり、大阪、沖繩等に営業所を有している。

2  原告らは、昭和四九年一一月一日現在、被告の従業員であつて、別紙原告目録記載の原告伊沢善春から原告宮城善徳までの一〇名(以下沖繩営業所勤務の原告らという。)は沖繩営業所に勤務し、別紙原告目録記載の原告松井俊から原告坂本行雄までの九名(以下大阪営業所勤務の原告らという。)は大阪営業所に勤務していた。

3  (一) 沖繩営業所勤務の原告らは、昭和四九年一一月一四日から同年一二月一五日までの間、勤務につくことができず、右期間に相当する別紙債権目録未払賃金一一月分欄及び同一二月分欄記載の各賃金の支払を受けていない。

(二) 大阪営業所勤務の原告らは、昭和四九年一二月一二日から同月一五日までの間、勤務につくことができず、右期間に相当する別紙債権目録未払賃金一二月分欄記載の各賃金の支払を受けていない。

(三) 原告らの昭和四九年一一月分賃金の支払日は同年一二月二五日であり、昭和四九年一二月分賃金の支払日は昭和五〇年一月二五日である。

4  沖繩勤務の原告らが昭和四九年一一月一四日から同年一二月二五日まで、大阪営業所勤務の原告らが同月一二日から同月一五日まで、それぞれ就労義務を履行することができなかつたのは、以下のとおり、債権者たる被告の責に帰すべき事由によるものである。

(一) 被告は、右期間中、原告らに対し、休業を命ずる必要性も合理性もなかつたにもかかわらず、休業を命じたのであるから、原告らが右期間中就労できなかつたのは、被告の責に帰すべき事由によるものである。

(二) 仮に右期間中に原告らに対して休業を命ずる必要があつたとしても、その原因は、次のとおり、職業安定法に違反した被告が自ら作り出したものであるから、原告らが右期間中就労できなかつたのは、なお被告の責に帰すべき事由によるものである。

すなわち、原告らの所属するノースウエスト航空日本支社労働組合(以下組合という。)は、被告と日本空港サービス株式会社(以下ジヤスコという。)との間で締結された請負契約が職業安定法違反であるとして、その改善(請負契約の廃止とジヤスコ従業員の直接雇用化)を要求した。ところが、被告は、右組合の要求を容れず、被告所有の機材の一部をジヤスコに売却することにより違法行為はなくなる旨回答してきた。しかし、被告の右回答では、違法状態が継続しているため、組合は、被告の下請対策の改善を要求して、東京においてストライキを行ない、右ストライキの実効を確保するため、被告車両の保管を行なつたものである。

したがつて、仮に被告の飛行便の欠航が組合の右ストライキ及び車両確保によるものであるとしても、組合の行なつたストライキの原因は専ら職業安定法違反を犯した被告にあり、被告はストライキの原因を除去することができ、また除去すべきものであつたのであるから、本件の休業は、被告の責に帰すべき事由によるものというべきである。

5  仮に賃金請求権が認められないとしても、原告らは被告に対し、次のとおり休業手当請求権を有する。

すなわち、労働基準法二六条にいう「使用者の責に帰すべき事由」とは、不可抗力に基づく場合を除く企業経営者の責任に属するすべての事由をいうと解すべきところ、被告の休業が組合のストライキを原因とするとしても、右ストライキは被告の違法行為の排除を求めて行なつたものであるから、被告の休業は、不可抗力とはいえず、使用者たる被告の責に帰すべき事由によるものである。

6  よつて、原告らは被告に対して、それぞれ主位的に別紙債権目録請求債権(一)欄記載の各賃金、予備的に同目録請求債権(二)欄記載の各休業手当と、これらに対する弁済期経過後である昭和五〇年一月二六日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する答弁

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3(一)及び(二)の事実は認める。

4  同4は争う(但し、沖繩営業所勤務の原告らが昭和四九年一一月一四日から同年一二月一五日までの間就労しなかつたこと、及び、大阪営業所勤務の原告らが昭和四九年一二月一二日から同月一五日までの間就労しなかつたことは、認める。)。

5  原告らが就労できなかつたのは、以下に述べるとおり、被告の責に帰すべき事由によるものではない。

すなわち、組合は、昭和四九年一〇月一五日から時限ストライキを行なつたが、同月一八日午後になつて、組合員らは、羽田空港の航空機発着作業を準備する場所(ジエイ・ワン・スポツトと呼ばれている。)付近に駐車させてあつた航空機サービス用車両約七〇台(搭乗員用バス、貨物コンテナ運搬車、貨物牽引用トラクター、コンテナ搭載車、食糧運搬車、航空機牽引車、航空機修理用車両、フオークリフト、エンジンスターター等)を、被告の警告を無視して勝手に運行し、約二キロメーター離れた格納庫付近まで持ち去り、その一部を格納庫内に入れ、残りの車両を格納庫前に密集させて駐車させ、格納庫を封鎖した。そして、組合員らは、多数で格納庫内外に常駐し、右車両の搬出に赴いた管理者をとり囲むなどして、実力をもつて車両の運行を妨害した。

組合は、同月二〇日にストライキを中止し、組合員らが職場に復帰したため、右車両占拠も解除された。

しかし、組合は、同年一一月一日からほぼ全面的かつ無期限のストライキに入り、組合員らは、同日以降、前回同様に車両を格納庫まで持ち去り、格納庫の入口を封鎖し、被告の管理者等による車両の使用を実力で妨害するなどして、車両を占有・支配した。

右車両占拠は、同年一二月一五日まで続けられた。

その結果、正常な航空機の運行が不能となり、東京・沖繩間の航空便は、大部分が運休せざるをえなくなり、東京・大阪間の航空便は、半数以上(同月一二日から同月一五日までの間は二便を除いた全便)が運休せざるをえない状況となつて、沖繩及び大阪の営業所における原告らの勤務・就労は、不必要かつ不可能となつた。

そこで、被告は、沖繩営業所勤務の原告らに対しては、昭和四九年一一月一四日から同年一二月一五日までの間、大阪営業所勤務の原告らに対しては、同月一二日から同月一五日までの間、それぞれ休業を命じ、原告らは右期間就労しなかつた。

以上のとおり、組合が違法に航空機サービス用車両を実力で占拠したため、飛行便の大幅な欠航を余儀なくされ、原告らの就業は全く不必要となつたのであるから、被告が原告らに休業を命じたこと及びその結果原告らが就労しなかつたことは、被告の責に帰すべき事由によるものとはいえない。

6  同5は争う。

ストライキは、法において認められた労働者の権利行使であるから、事業外の事由に起因するものとみるべく、また社会通念上いかに使用者が努力しても避けられるものではないから、使用者にとつては一種の不可抗力とみるべきであり、残つた労働者を就労せしめることができない場合あるいはそれが無意味となるような場合には、たとえ残つた労働者の就業を拒否しても、休業手当の支払義務はないと解すべきである。とくに、本件の場合は、単なるストライキを理由とする就業拒否ではなく、組合の違法な車両占拠を理由とする休業であるから、労働基準法二六条にいう「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないことは明らかである。

第三証拠<省略>

理由

第一(事実関係)

一  請求原因1、2、3(一)及び3(二)の事実は、当事者ら間に争いがない。

請求原因3(三)の事実は、被告が明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。

二  (ストライキ等の経過について)

成立に争いのない甲第五、第六号証、第九、第一〇号証、乙第二号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第二ないし第四号証、乙第八ないし第一〇号証、証人高井一郎の証言により昭和四九年一一月当時の被告会社格納庫付近の写真と認められる乙第一号証の一ないし四、証人高井一郎の証言、及び、同城間恒の証言(後記認定に反する部分を除く。)を総合すれば、次の事実を認めることができる。

1  昭和四九年九月当時、被告会社では、一〇〇名程度のジヤスコ等の下請会社の従業員が働いていた。

2  組合は、右のような下請会社の労働者の存在が、組合員の労働条件向上を阻害し、ストライキの実効を失わせることになるなどと判断し、昭和四九年九月六日、被告に対し、下請会社の労働者の正社員化を要求した。

3  また、組合は、同月一七日、東京地方検察庁に対し、被告会社東洋支社長らを職業安定法四四条違反で告発した。

4  被告は、前記2の組合要求に対し、ジヤスコから派遣されているグランド・ホステスに替えて、新たにグランド・ホステスを公募する旨提案した。

5  組合は、ジヤスコのグランド・ホステスを正社員化するよう要求し、同年一〇月一五日以降時限ストライキに入つた。

6  同月一八日になつて、組合は、被告が地上作業に使用する車両(ステツプ車、給水車、トイレツト掃除用車両、整備用車両など)を、無断で所定の場所から被告格納庫付近に運び、車両の一部を格納庫の中へ入れ、残りの車両を格納庫前に互いに密着させて駐車させ、これら車両を占拠・管理した。

7  組合が右のようないわゆる車両占拠を行なつたねらいは、飛行機の運行を妨害することにあつた。すなわち、従前、単なるストライキでは、管理職等の非組合員によつて飛行機の運行が確保され、飛行機の運行に支障を与えることができなかつた。そこで、飛行機の運行に現実の遅れあるいは欠航を生じさせるため、このとき始めて車両占拠という争議戦術がとられた。

8  同月一八日、ジエンキンス支社長ら数名が、車両を取り戻すため、格納庫へ赴いた。しかし、組合員らが実力をもつて妨害したため、車両を取り返えすことができなかつた。

9  同月二〇日になつて、ストライキ及び車両占拠は解除された。

10  同月二二日ごろ、被告は、塔載課において被告会社従業員とジヤスコ従業員とが一緒に作業している状態を是正し、職業安定法違反のおそれを解消するため、自社従業員の取り扱う飛行便とジヤスコ従業員の取り扱う飛行便とを特定して、両者の作業を分離し、ジヤスコに対しては、被告の使用している機材約一〇台を払い下げる旨の改善案を発表した。

11  組合は、被告の右改善案は、職業安定法違反の事実を隠蔽し、将来搭載部門を全面的に下請化する意図があるとして、右改善案に反対し、昭和四九年一一月一日午後四時五〇分以降、大阪地区及び沖繩地区を除いて全面的に無期限のストライキに突入した。

12  そして、組合は、同日から、前回と同様に車両占拠を行なつた。すなわち、地上作業用車両を無断で格納庫まで運び、その一部を格納庫の中へ入れ、残りを格納庫前に駐車させたうえ、組合員らを常駐させ、右車両を監視させた。

車両占拠が始まつた当初は、被告が管理する車両も若干残つていたが、同月四日ごろまでに、被告が地上作業に使用していた車両は、すべて組合が占有・管理するに至つた。

13  同月四日、ジエンキンス支社長ら会社関係者が、車両を取り戻すために格納庫へ赴いた。しかし、組合員らの妨害で、車両を取り戻すことができなかつた。

14  被告は、同月一八日付をもつて、東京地方裁判所に対し、組合はその所属組合員及び同調者をして非組合員である被告の従業員及び被告が指定した第三者が羽田空港内において被告所有にかかる航空機サービス用の諸機材(搭乗員用バス、貨物コンテナ運搬車、貨物牽引用トラクター、コンテナ搭載車、食糧運搬車、航空機牽引車、航空機修理用車両、フオークリフト、エンジンスターター等)を運行することを口頭による平穏な説得以外の方法で妨害してはならない、組合はその所属組合員及び同調者をして非組合員である被告の従業員及び被告が指定した第三者が羽田空港内旧ターミナル地区にある被告管理にかかる格納庫に出入することを口頭による平穏な説得以外の方法で妨害させてはならない、組合はその所属組合員及び同調者をして被告の許可なくして被告の所有にかかる航空機サーヴイス用機材を運行または管理させてはならない、などの裁判を求める妨害行為等禁止仮処分命令を申請した。

15  大森公共職業安定所長は、昭和四九年一二月六日付をもつて、被告に対し、被告がジヤスコに請負わせている旅客の案内、貨物・手荷物の搭載等の業務は、職業安定法四四条に抵触する疑いがあるので、速かに改善されたい旨通告した。

16  同月一四日、被告と組合との間で、被告の従業員の取り扱う飛行便とジヤスコ従業員の取り扱う飛行便とを分離するという被告の改善案に従つて暫定的に作業する旨の裁判上の和解が成立した。

17  同月一五日、組合は、無期限のストライキと車両占拠を解除した。

18  搭載課では、右改善案に従つた作業が、現在まで行なわれている。

なお、証人城間恒は、車両を実力をもつて占拠する意思はなく、車両には鍵を付けて常に動かせる状態にし、また、会社の人間が車を動かそうとするのを妨害したことも、暴行や脅迫を行なつたこともなかつた旨証言するが、右証言部分は、前掲乙第八ないし第一〇号証、証人高井一郎の証言に照らし、信用できない。

三  (昭和四九年一一月当時の飛行便の運行予定について)

成立に争いのない甲第一号証一ないし四によれば、被告は、昭和四九年一一月及び一二月当時、日本において、次のような飛行便の運行を予定していたと認められる(なお、到着後夜間停泊し翌朝出発する便は、到着した日の便として計算する。)。

1  西回り(アメリカから東京を経由して東南アジア・韓国方面へ向う飛行便)の旅客便

毎日四便(羽田到着は一七時五分から二二時五分までの間)

2  東回り(東南アジア・韓国方面から東京を経由してアメリカへ向う飛行便)の旅客便

毎日四便(羽田到着は一四時三〇分から一六時四五分までの間)

3  西回り貨物便

月曜日から土曜日まで毎日一便

4  東回り貨物便

月曜日から土曜日まで毎日一便

四  (羽田空港における実際の運航状況について)

前記二及び三で認定した事実、並びに、前掲甲第一号証の一ないし四、成立に争いのない甲第一六号証、乙第七号証の二、証人高井一郎の証言により真正に成立したと認められる乙第三、第四号証、第六号証、証人佐藤健、同高井一郎の各証言、証人城間恒の証言(但し、後記認定に反する部分を除く。)、弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。

1  昭和四九年一一月一日から、組合がストライキに入つたため、非組合員である管理職らが必要な地上作業を行なうことになつた。ところが、組合が地上作業用車両を占拠したため、地上作業の円滑な実施が困難となり、飛行便の遅れや欠航を生じた。具体的には、(一)乗客の乗降用のステツプ車がなくなつたため、一つしかない待合室から直接飛行機に乗り込むジエツトウエイをやりくりして、乗客の乗降作業を行なうこととなり、その結果、飛行機の到着及び出発時刻を変更せざるをえなくなつた、(二)また、コンテナーの積み降ろしをする機材がなくなつたため、貨物や手荷物をコンテナーを用いて積み降ろすことができなくなり、替わりにベルトコンベヤーで乗客の手荷物の積み降ろし作業を行なつたが、通常の作業時間に比べて五倍ないし六倍の時間を要した、(三)さらに、機内食の持ち込みもできなくなり、羽田空港以外の空港で機内食を運び込むことになつた、という状況を生じた。

2  被告は、ストライキ開始後直ちに貨物便の運行を中止し、次に旅客便(旅客便の中にも貨物を運ぶ便があつた。)に貨物を積むことも止め、旅客便の運航を確保しようとしたが、旅客便になお欠航が生じた。

3  組合のストライキ及び車両占拠が長びいてきたので、被告は、同月一〇日すぎごろ、残つた人員及び機材によつて確保できる飛行機の運航を一日四便程度と判断し、原則として被告の主要路線である第四便、第七便、第九便、第一〇便の運航を確保し、他の便を欠航することにした(但し、マニラ・東京間を第六便という形で運航し、東京からアメリカへ向う際には第四便として運航された日が一一月中に一部ある。)。

4  また、ホノルル行きの乗客の多い日(主に一一月後半である。)は、東京・ホノルル間を結ぶ第二一便(ホノルルから東京へ来る便)ないし第二二便(東京からホノルルへ向う便)の運航も行なわれている。

5  さらに、当時、大阪・台北間の飛行機を利用する乗客が多かつたので、大阪・台北間のみを結ぶ臨時便も運航された。

6  なお、木曜日の第一〇便は、台北―→大阪―→東京と運航される予定であつたが、東京・大阪間が欠航となり、替わりにソウル・東京間に第二二便が運行され、東京からホノルルへ向う際には第一〇便として運航されている。

7  結局、組合が車両占拠を行なつていた昭和四九年一一月一日から同年一二月一五日までの間、羽田空港を経由する予定であつた飛行便のうち、実際に羽田空港を離着陸した飛行便は、半数にも足らず、半数を超える飛行便が欠航となつた。

8  なお、車両占拠が終わつた同月一六日以降も欠航便が生じているが、これは、飛行機の用意及び乗務員の確保に時間を要するため、車両占拠が終つても直ちに時刻表どおりの運航を回復することができなかつたためである。

五  (沖繩における運航及び休業等の状況について)

前記二ないし四で認定した事実、並びに前掲甲第一号証の一ないし四、第一六号証、乙第六号証、第七号証の二、成立に争いのない甲第一五号証、証人粟盛広芳、同佐藤健、同高井一郎の各証言、原告伊波善春本人尋問の結果、弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。

1  昭和四九年一一月及び一二月当時の沖繩を経由する被告の飛行便の運航予定は、次のとおりであつた。

(一) 西回り旅客便(週三便)

(1) 月曜日 第七便(・・東京―→沖繩―→マニラ)

(2) 水曜日 第三便(・・東京―→大阪―→沖繩―→台北)

(3) 日曜日 第三便(・・東京―→大阪―→沖繩―→台北)

(二) 東回り旅客便(週三便)

(1) 月曜日 第六便(台北―→沖繩―→大阪―→東京・・・)

(2) 木曜日 第六便(マニラ―→沖繩―→東京・・・)

(3) 土曜日 第二二便(台北―→沖繩―→大阪―→東京・・・)

(三) 貨物便なし。

2  昭和四九年一一月一日以降、組合の車両占拠により、沖繩を経由する飛行便の一部に欠航を生じていた。ところで、同月一〇日すぎごろ、被告が原則として一日四便の主要路線の運航を確保することに決めたことから、沖繩を経由する飛行便は、月曜日の第七便を除いて欠航する便となつた(但し、木曜日の第六便については、後述のとおり。)。月曜日の第七便については、マニラの戒厳令との関係から、沖繩を経由しないことに決められた。すなわち、第七便は、欠航となつた第三便に替わりアンカレージに立ち寄ることが予定されたため、東京における到着及び出発の時刻が遅れ、沖繩を経由すると、マニラ(マニラは、戒厳令のため、二四時以降の飛行機の離着陸が原則として認められなかつた。)への到着が二四時以降になるおそれを生じ、沖繩への寄港を中止することになつた。また、運航の確保されることになつた第七便のうち水曜日の第七便(・・・東京―→マニラ)の飛行機が、時刻表上、翌日の木曜日に第六便として沖繩を経由して引き返えす予定であつたため、第六便は本来欠航となる便であつたが、一一月後半の木曜日の第六便は、マニラ・東京間のみを運航し、東京からは第四便として運航された日があつた(右の第六便が沖繩を経由しなかつたのは、木曜日の第四便の東京出発予定時刻が一五時四五分であつたところ、同日の第六便の沖繩を経由した東京到着予定時刻が一六時五五分であり、沖繩を経由した第六便の飛行機を東京から第四便として出発させることになると、第四便の東京出発時刻が大幅に遅れることになるので、第四便の出発予定時刻に間に合わせるため、第六便を沖繩へ経由させなかつたものと考えられる。実際、一二月には、始発のマニラから第四便という形で運航されている。)。

3  なお、大阪・台北間に臨時の飛行便が運行されたが、右飛行機を沖繩に立ち寄らせる意味はほとんどなかつた。すなわち、国際便である被告の飛行便には、沖繩・大阪間の旅客を乗せることができないので、大阪・台北間を結ぶ飛行機を沖繩に経由させても、沖繩での乗降客がほとんどないことから、右飛行機を沖繩に経由させる必要性はなかつた。したがつて、運輸省から台北・大阪間の臨時便について運航許可を得る際にも、沖繩を経由させる旨の許可は得ていない。

4  被告が沖繩経由の飛行便を欠航させたのは、欠航による乗客への影響が少ないことも考慮されていた。

すなわち、当時、沖繩経由の飛行便の利用者は、アメリカ本土と沖繩とを征き来するアメリカ軍関係者が多かつた。しかし、アメリカ軍には、マツプと呼ばれる沖繩とアメリカ本土とを結ぶ軍の飛行便があり、右マツプを利用すればアメリカへ行くことができた。また、右マツプを利用して横田基地経由で台北へ行くこともできた。さらに、沖繩・台北間には、トランスワールド航空会社の飛行便が一日一便運航されていた。

したがつて、沖繩経由の飛行便を欠航させても、一般乗客に与える影響は少なかつた。

5  以上のような経緯で、同月一二日以降沖繩を経由する飛行機はなくなつた。被告は、同月一三日、連絡業務を行なう管理職三名を除いて、残りの一二名全員(沖繩営業所勤務の原告らを含む。)に対し、同月一四日からの休業を命じた。

6  沖繩営業所勤務の原告らは、昭和四九年一一月一四日から同年一二月一五日までの間、勤務に就くことができなかつた(右事実は、当事者間に争いがない。)。

六  (大阪における運航及び休業等の状況について)

前記二ないし四で認定した事実、並びに、前掲甲第一号証の一ないし四、第一六号証、乙第四号証、成立に争いのない第五号証、証人佐藤健、同高井一郎の各証言、原告藤井雅行本人尋問の結果、弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。

1  昭和四九年一一月及び一二月当時の大阪を経由する飛行便の運航予定は、次のとおりであつた(但し、到着後夜間停泊し翌朝出発する便は、到着した日の便として取り扱う。)。

(一) 西回り旅客便(毎日一便)

(1) 日曜日 第三便(・・・東京―→大阪―→台北)

(2) 月曜日 第三便(・・・東京―→大阪―→台北)

(3) 火曜日 第三便(・・・東京―→大阪―→ソウル)

(4) 水曜日 第三便(・・・東京―→大阪―→沖繩―→台北)

(5) 木曜日 第三便(・・・東京―→大阪―→台北)

(6) 金曜日 第九便(・・・東京―→大阪―→台北)

(7) 土曜日 第三便(・・・東京―→大阪―→沖繩―→台北)

(二) 東回り旅客便(毎日一便)

(1) 日曜日 第六便(台北―→大阪―→東京・・・)

(2) 月曜日 第六便(台北―→沖繩―→大阪―→東京・・・)

(3) 火曜日 第二二便(台北―→大阪―→東京・・・)

(4) 水曜日 第六便(ソウル―→大阪―→東京・・・)

(5) 木曜日 第一〇便(台北―→大阪―→東京・・・)

(6) 金曜日 第六便(台北―→大阪―→東京・・・)

(7) 土曜日 第二二便(台北―→沖繩―→大阪―→東京・・・)

(三) 西回り貨物便

週五便。

(四) 東回り貨物便

週四便。

(五) その外、被告の大阪営業所では、木曜日に到着し金曜日に出発するインド航空の飛行便の地上作業を委託されていた。

2  組合のストライキ及び車両占拠のため、昭和四九年一一月一日から、大阪を経由する貨物便は運航を中止した。

3  旅客便については、昭和四九年一一月一日から、組合の車両占拠の影響で、しばしば欠航を生じる状態になつていたが、同月一〇日すぎごろ、羽田空港で取り扱える飛行便は原則として一日四便と判断されたことから、東京を経て大阪を経由し外国へ向う飛行便、逆に大阪を経て東京を経由し外国へ向う飛行便は、原則とし運航されないことになつた。しかし、当時、大阪から台北へ行く乗客が非常に多く、大阪・台北間の飛行便を欠航すると、一般乗客に与える影響が大きいと考えられた。そこで、大阪・台北間のみ飛行機の運航を続けた(大阪から先の欠航した部分については、事後的に運輸省に、報告されていた。)。ところが、ストライキが長期化したため、同月二二日以降運航する大阪・台北間の飛行機は、事前に臨時便として運輸省の許可を得て、運航されることになつた。そして、右臨時便は、ほぼ一日二便の割合で運航された。右臨時便の許可は、同年一二月一一日まで与えられた。

4  大阪・台北間の臨時便の許可は、同年一二月一一日までしか与えられていなかつたため、同月一二日以降、大阪・台北間の飛行便を運航することができなかつた。右臨時便に替えて、貨物便の運航が再開されることになつた。

その結果、同月一二日以降、大阪営業所においては、インド航空から委託された作業と貨物便に関する作業とが行なわれるだけとなつた。

5  そこで、被告は、同月一一日、種々の連絡等に必要な管理職六名と、インド航空の飛行便及び自社の貨物便を取り扱うのに必要な人員五名とを除き、先任順位に従つて残つた一二名(大阪営業所勤務の原告らを含む。)に対し、同月一二日以降の休業を命じた。

6  大阪営業所勤務の原告らは、昭和四九年一二月一二日から同月一五日までの間、勤務に就かなかつた(右事実は、当事者間に争いがない。)。

第二前記第一で認定した事実を前提に、原告らの本訴請求の当否を判断する。

一  (未払賃金請求について)

1  (休業の必要性・合理性について)

(一) 原告らは、被告は、休業を命ずる必要性も合理性もなかつたにもかかわらず、原告らに対し休業を命じたのであるから、原告らが就労できなかつたのは、被告の責に帰すべき事由によるものである、と主張する。

(二) そして、証人城間恒は、原告らの右主張に沿う証言をしている。

しかしながら、同証人の右証言部分は、昭和四九年一一月一日から同年一二月一五日までの間行なわれたいわゆる車両占拠(以下本件車両占拠という。)が、飛行機の運航を遅らせ、欠航を生じさせる意図をもつていた(同証人は、飛行便の遅れを期待したが、欠航までは予定しなかつた旨の証言をしているが、飛行便の遅れと欠航とを右のように区別すること自体極めて不自然であり、欠航を予定しなかつた旨の証言部分は到底信用できない。)との認定事実に相矛盾し、基本的に信用し難いものといわなければならない。

(三) 次に、証人城間恒は、甲第一七号証に基づき、昭和五三年の飛行機の欠航状況を説明したうえ、昭和四九年一一月一日から同年一二月一五日までのストライキ(以下本件ストという。)期間中の欠航は、昭和五三年の欠航と同様乗客が少なかつたから行なわれたのであり、本件ストとは関係がない旨証言している。

しかしながら、昭和五三年の欠航状況(そもそも右欠航が乗客が少ないことのみを理由にすると認めるに足る証拠もない。)から、本件スト期間中の欠航が本件車両占拠とは関係なく行なわれたものであり、右期間中時刻表どおりの運航が可能であつたと推認できるものではない(本件車両占拠によつて時刻表どおりの運航が不可能となつたとき、どの便を運航し、どの便を欠航にするかを決める基準として、乗客の多寡が重要な要素となつたことは容易に推測できるが、本件車両占拠とは関係なく運航が可能であつたにもかかわらず、本件車両占拠を口実に旅客の少ない便を欠航にしたとは、特段の事情のないかぎり、これを推認することはできない。)。

(四) また、証人城間恒は、本件スト期間中、ホノルル便が運航されているから、一日四便以上の運航が可能であつたと証言している。

確かに、東京・ホノルル間を結ぶ第二一便及び第二二便が運航され、一日五便の飛行機が運航された日の存在が認められる。しかし、第二一便及び第二二便が運航された日は、一一月後半でホノルル便の乗客が特に多い日に限られていることからすれば、臨時便的性格を有するものであつたと認められ、右事実から直ちに第二一便及び第二二便の運航が毎日時刻表どおり可能であつたと推認できるものではないし、他の欠航便も時刻表どおり運航できたとまで推認できるものではない。

(五) 証人城間恒は、甲第一九号証、第三〇号証に基づき、本件スト期間中、被告専用のジエツトウエイ以外に、他社のジエツトウエイ及び他社のステツプ車を利用して、飛行機の運航ができたから、欠航をする必要はなかつた旨証言している。

なるほど、証人城間恒の証言、原本の存在及びその成立に争いのない乙第二〇ないし第二二号証によれば、被告は、自社専門のジエツトウエイ以外に、他社のジエツトウエイ及び他社のステツプ車を利用して旅客を乗降させたことがあるのではないかとの事実が窺われる(但し、右事実は、被告専用のジエツトウエイを利用するため、飛行機の発着時刻を変更せざるをえなかつた事実自体を否定しさるものではない。)。しかし、右事実は、一日の運航便が通常の半分となつた状況で、その半分の飛行便を他社の機材をも利用して運航したことを意味するのであるから、本件スト期間中、本件車両占拠があつたにもかかわらず、他社のジエツトウエイ及びステツプ車を利用して、時刻表どおりの運航が可能であり、欠航する必要はなかつたとまで推認できるものではない。

(六) さらに、証人城間恒は、甲第一八号証に基づき、同一の飛行便でも飛行機を変更することがあると説明したうえ、第七便がアンカレージに寄港したため、東京への到着が遅れたとしても、他の飛行機を第七便として東京から出発させることができる旨証言している。

ところで、前掲甲第一号証の二によれば、月曜日の第七便は、時刻表上、一七時〇五分に羽田空港に到着して、一八時四五分に羽田空港を出発し、沖繩へ寄港したうえ、二三時三五分にマニラへ到着する予定になつているが、前掲甲第一六号証によれば、アンカレージを経由した第七便は、ほとんど一八時四五分以降に羽田空港に到着している(多くの便が一九時三〇分前後に到着しており、二〇時以降に到着した便もかなり存在する。)。そして、東京において第七便の飛行機を交代させても、アンカレージから到着した飛行機に乗つていた乗客及びその手荷物を、東京から出発する飛行機に移す時間が当然必要と考えられるから、仮に東京において第七便の飛行機を交代させることができたとしても、当然に、アンカレージに立ち寄つた第七便が、沖繩を経由したうえ戒厳令の制限時間にかかることなくマニラへ到着できる時刻に、羽田空港を出発できたと推認することはできない。

(七) 証人城間恒は、甲第二〇号証に基づき、本件スト期間中の羽田空港における到着から出発までに要した時間の平均時間を計算したうえ、昭和四九年一二月二日、同月九日及び同月一六日の第七便は、使用された飛行機が羽田空港へ到着した時刻からすれば、沖繩を経由して、戒厳令の制限時間内にマニラへ到着できる時刻に、羽田空港を出発できたはずである旨証言する。

しかしながら、同証人の証言する羽田空港における到着から出発までに要した平均時間とは、本件スト期間中の地上滞在時間の短い飛行便を選んだものであり、あらかじめ沖繩に寄港することが可能か否かを判断する際に、右平均時間をもつて羽田空港を出発できたと判断すること自体問題があるし、また、同証人は、マニラへ二四時に到着すればよいとの前提で、羽田空港を出発すべき時刻を計算しているが、戒厳令の制限にかかることなくマニラへ到着できるか否かをあらかじめ検討する際には、若干の遅れを考慮して、二四時ぎりぎりではなく、ある程度の余裕をみた時刻がマニラへの到着時刻となることを前提に沖繩へ経由できるか否かを検討すべきものと考えられるから、制限時間である二四時を到着時刻の基準とすることも不合理であると考えられる。したがつて、城間証人の右証言部分は、いわゆる結果論を述べたものであつて、沖繩へ寄港するか否かを決める際の基準としては妥当でなく、右証言をもつて、月曜日の第七便をマニラの戒厳令のため沖繩へ寄港させないと決めた判断が、不合理・不相当であつたと認めることはできない。

(八) 更に、証人城間恒は、本件ストの期間中、韓国において休業が行なわれていない旨証言している。

しかしながら、韓国において休業が行なわれなかつた事実から、直ちに沖繩及び大阪で行なわれた休業が不必要であつたとまで推認できるものではない。

(九) また、証人城間恒は、本件車両占拠が解除された後である昭和四九年一二月一六日以降も欠航便が多いことから、本件スト期間中の欠航は、本件車両占拠と関係なく行なわれたものであると証言している。

しかしながら、車両占拠が解除されても、飛行機の用意及び乗務員確保に時間を要するため、直ちに時刻表どおりの運航が可能となるわけではないと認められるから、本件車両占拠後にも欠航便があつた事実をもつて、本件スト期間中の欠航が車両占拠とは関係なく行なわれたものであると推認できるものではない。

(一〇) 他に、被告が原告らに対し休業を命ずる必要性も合理性もなかつたと認めるに足る証拠はない。

(一一) かえつて、前記認定事実によれば、本件車両占拠によつて飛行便の運航に遅れや欠航を生じ、そのため、羽田空港を経由する飛行便のうち運航が確保できる飛行便は、原則として一日四便と決められた(この判断が不合理であつたと認めるに足る証拠はない。)結果、沖繩を経由する飛行便がなくなつて(沖繩を経由させないとの判断が不合理であると認めることができないことは、前示のとおりである。)、沖繩営業所勤務の原告らを就労させることが不必要・無価値となり、また、大阪では臨時便の運航が続けられたが、臨時便運航の許可の期限が切れたため、大阪営業所勤務の原告らの就労が不必要・無価値になつたと認められる。

2  次に、原告らは、本件ストライキの原因は被告の職業安定法違反にあるから、休業を命ずる必要があつたとしても、なお原告らが就労できなかつたのは、被告の責に帰すべき事由によるものというべきである、と主張する。

ところで、本件ストライキの直接の原因は、被告の示した前記認定の改善案に反対することにあつたと認められるが、右改善案の内容が職業安定法に違反していたとは認められない。すなわち、大森公共職業安定所長は、昭和四九年一二月六日付の通告書をもつて、貨物・手荷物の搭載業務が職業安定法に抵触する疑いがあるとして、改善を要求しているが、右通告書は、改善案が実施される前にだされたものであり、右改善案実施後、右のような職業安定法違反の指摘があつたとの事実は窺われず、現在まで右改善案に従つた作業が行なわれていること、また、東京地方検察庁に対する告発についても処分がなされたとの事実は窺われないことからすれば、右通告書は、右改善案実施前の搭載課の作業について触れたものと認めるのが相当であり、他に右改善案の内容が職業安定法に違反すると解するに足る事実を認めさせる証拠はない。

してみると、原告らの前記主張は、ストライキの原因が被告の職業安定法違反にあるとの前提事実を欠き、失当といわなければならず、また、被告が職業安定法違反を解消するために改善案を示し、組合がこれに反対してストライキに入つたからといつて、就労の不必要となつた原告らに休業を命じたことが被告の責に帰すべき事由によるものと解しなければならない理由はない。

3  他に、原告らの就労できなかつたことが、被告の責に帰すべき事由によるもの、と認めるに足る証拠はない。

二  (休業手当について)

1  原告らは、被告の休業が本件ストライキを原因とするにしても、右ストライキは被告の違法行為の排除を求めて行なつたものであるから、右休業は、労働基準法二六条に定める被告の責に帰すべき事由によるものである、と主張する。

2  ところで、労働基準法二六条に定める「使用者の責に帰すべき事由」とは、休業手当の支払が休業中における労働者の生活を保障する趣旨にあると解せられることに照せば、民法五三六条二項に定める「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、使用者に過失を肯定することが困難な材料不足などのいわゆる経営上の障害をも含むものと解すべきである。しかし、ストライキを含む一切の争議行為は、労働者の団体がその意思決定に基づき、その目的を達するために行なうものであつて、使用者に争議行為を停止する権限はないから、労働者の争議行為によつて残つた労働者を就労させることが無価値となつた場合には、使用者が不当な目的をもつて殊更に労働者をして争議行為を行なわせるように企図したり、争議行為に至る経過について使用者の態度に非難されるべき点がある等特段の事由がない限り、労働基準法二六条に定める「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないと解するのが相当である。

3  これを本件についてみるに、被告が原告らに対し休業を命じたのは、被告の示した改善案に反対して行なわれたストライキの実効確保のため実施された本件車両占拠の影響によつて原告らを就労させることが無価値になつたことに基因すると認められるところ、被告の右改善案の内容が職業安定法に違反すると解するに足る事実は認められず、かえつて、被告は、職業安定法に抵触するおそれのある搭載課の作業内容を改めるため、右改善案を実施しようとしたものと認められるから、被告が右改善案を示したことをもつて、被告が不当な目的をもつて殊更に組合員をして車両占拠を行なわせようと企図したとも、車両占拠(ないし本件ストライキ)に至る経過について被告の態度に非難されるべき点があるとも認めることは困難である。

4  他に、被告が原告らに命じた休業が、労働基準法二六条所定の被告の責に帰すべき事由によるものである、と認めるに足る証拠はない。

第三(結論)

以上の事実によれば、原告らの本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小林正明)

(別紙請求債権目録省略)

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